わこわこマラソンクラブ

11/19/2011

第19回日本山岳耐久レース(ハセツネカップ)完走レポート

「雨よ、降らないでおくれ!」
1週間後の10月22日にハセツネのスタートを控えた日曜日の朝、NHKの週間天気予報を見ながら、金曜から天気は下り坂という報道を聞いていた私は、天にそう願った。
しかし、最近の天気予報はよく当たるものだ。その週の月曜から土曜日までの天気は、まさに完璧にその予報どおりとなった。
金曜日の会社から自宅に帰る途中、ぽつりぽつりと雨降りとなり、夜半には本降りとなった。
昨年のことが不安を増幅させる。
それは、前夜から降り続いた雨でトレイルがどろどろになり、赤土が向き出た路面はすべりまくり、更にはライトが故障し、CWXタイツが破れと、踏んだり蹴ったりのレースとなり、最後に水が33km地点で切れて、脚は余っているが水切れで人生初めてのリタイアを経験したためだ。
午前9時に家を出て、自宅近くのコンビニで今日の昼飯とするおにぎりを3つ調達し、駅に急ぐ。
電車を東上線、武蔵野線、中央線、青梅線、五日市線と乗り継ぎ、11時に会場であるハセツネカップ会場に到着した。
自宅を出てから会場到着まで、かなりの雨降りであったが、五日市交流センターで受付を済ませ、着替えをすべく五日市中学校の体育館に着くころには少し降り方もおさまりつつあるように感じた。
体育館には既に多くの選手が集結しており、ビニルシートや寝袋を持ち込み、休息をとったり仲間たちとこれから始まるレースに思いを馳せていた。入り口から最も離れた場所にスペースを見つけ、シートを敷き、ひとときの休息をとる。









12:30、開会式が中学校校庭で始まる。不思議なことにさっきまで降っていた小雨が上がった。昨年トイレが混んでいたのを思い出し、中学校校庭の隣にある図書館で用を足させてもらった。
大会委員長他の挨拶のあと、選手宣誓、優勝カップ返還、準備体操があり、スタート5分前となる。














10時間以内、12時間以内・・・と目標タイムごとに列が作られ、そこに並ぶシステムだが、なぜか10時間以内のところが長い列になっている。もちろんこれは第一関門までの混雑、渋滞を回避するためにそうすると思われるが、悩ましい実態だ。
私は12時間の列に並ばせてもらう。実力からは飛躍しており、私もその悩ましい人間の一人に違いない。
13時、号砲とともにランナーがスタートしていく。
「東京の奥多摩山域を舞台に、限りなき自己能力への挑戦とサバイバルレースの展開」
こうハセツネカップの大会概要のトップに記載されている。
レースが始まればゴールまでエイドステーションはひとつもなし。42キロ地点の月夜見駐車場での水分の補給のみという、最近のマラソンやトレランに代表される至れり尽くせりの大会とは真逆のレースである。
昨年は3Lの水分を持つも、西原峠で、水切れで人生初のリタイアを経験しており、今年は万全を期して2Lの水、1.8Lのポカリスェットをグレゴリーのザックにいれた。
他にも食べ物、ファーストエイドキット、雨具、ウィンドブレーカーを入れており、おそらくザックの総重量は9kg程度にはなっていたと思う。やたら重いが、屈辱のリタイアを2度も繰り返すわけには行かない。
スタート時点でゲートをくぐったのは、おそらく全体の真ん中くらいだと思われる。ゆっくりと市街地を進み、南秋川にかかる大和田橋を過ぎるとお囃子と町の人たちの応援を受け、ゆっくり舗装された道路を登っていくと広徳寺があり、そこを過ぎると本格的なトレイルとなる。
その時点で猛烈な渋滞が始まる。昨年は立ち止まることはあまり無かったと記憶しているが、今年はゆっくり歩くだけではなく、途中で立ち止まりしばらく全く動かない場面が何度もあり、これがタイムロスと体力の消耗につながったように感じる。
しばらく山道を行くと視界が開け、左手に大きな変電所を見ながら進むことになる。
スタート時の標高は200m、変電所は300mなので100m稼いだ計算となる。舗装路が終わり、今熊神社の階段を登っていく。長い長い階段だ。昨年度ハセツネ2位の奥宮さんにトレランセミナーで教えていただいた、出来るだけ高さの差が無いところ(たとえば階段の一番端の部分)を登ることを心がけ、あしを使わないようにすることを心がける。
上り詰めたところで入山峠となる。7km地点、標高600m。14:38到着。
ここで安芸ランニングクラブの仲間である桃瀬さんと出くわす。入山峠からは細い階段を登っていくのだが、昨年とは違って階段待ちの長い列が出来ている。その先端に桃瀬さんがいらしてこちらを見つけてくれた。
10km地点の通過は15:26。遅い。
背中に背負っている水や荷物が重く、レースに影響を与えているのは間違いないが、それよりも深刻なのは8月末に罹った百日咳のためにほぼ1ヶ月練習出来ずに今日の日を迎えたことだ。もちろん山を走ることも一度も無く、長い距離を走ることをすることも無かった。兎に角、全体にわたり歩きに徹して20-22時間を目処に完走(完歩?)することを目指してスタート地点にたったことを忘れてはいけないと思った。
16:38、15.29km地点醍醐丸に到着。標高867m。ここまで微妙なアップダウンを繰り返しながら標高を少しずつ稼いだ結果だ。
980mの連行峰、990mの生藤山、950mの三国峠、966mの熊倉山をへて、第一関門の浅間峠(22.66km)に到着したのが18:37。22時が関門なので余裕で間に合った。よかった。
ここでは水分だけではなく、持ってきた補給食の魚肉ソーセージ、アミノ酸入りゼリーなどを胃に入れる。私は胃が強いのか、今まで長いレースをやってきても、吐いたり、胃が食べ物を受け付けなくなったりということはまず無い。また、今回はいつものようにガスター10を服用していない。忘れていたわけではないのだが、どうも最近、ガスター10を服用するとおならがどんどん出るようになり、少し控えている。
900mの日原峠、1005mの土俵岳、1098mの丸山、そして1000mの笛吹峠を経て、21:02、昨年リタイアした因縁の西原峠に到着。1158m。32.19km地点。
いよいよここから本レースの最高地点である三頭山に向けての厳しい上りが待ち構えている。
ただ昨年と違うのは、既にリタイアした地点を過ぎたこと、暑さが昨年ほどひどくなく、寒くなく、体調には影響が余りないこと、雨降りの影響で赤土が滑り易い状態が昨年ほどではないこと、そしてなによりもうれしいのが飲む水があることだ。
1188mの槇寄山を越え1430mの三頭山非難小屋に到着したのが22:08。この小屋にはお布団が用意されており、一休みできるのだということを、あとで仲間から聞いた。その仲間はあまりに気持ちよかったので3時間ほど寝てしまい、危なく次の関門に引っかかりそうになったという。
22:28、本レースの最高地点三頭山に到着。36.32km地点。
寒いかと思ったが寒くない。一体どうなってるんだと思うが、寒くないのはありがたい。体が動かなくなるから。
ここからはくだり基調となる。鞘口峠、風張峠を経て42kmの月夜見駐車場に到着したのが0:03。標高は1100mまで下った。
ここでは待ちに待った水分の補給がある。手持ちの水分は約1Lあった。ハイドロに1.5Lの水を入れてもらい、また食べ物を口に放り込む。
ここを過ぎると御前山まで登りとなる。1405mまで300mほど標高を稼ぐ必要が出てきた。ここらあたりからトレイルの両端にぽつぽつランナーがうずくまったり、横になったりして休んでいる姿を見ることが多くなった。実は私も今回は途中でしっかり休みたいと思ったが、一度休むと前へ進むことが出来なくなると思い、5回ほど道端に座り小休止を取っただけで、あとはゆっくり歩き、関門ではしっかり食べ物を摂り少し休むということを繰り返し、ゴール地点に向かった。
2:47に大ダワ到着。地元の方々の歓迎を受ける。写真を撮っていたら「随分余裕あるね。写真とってあげるよ」となり、この写真を撮っていただいた。
3:54大岳山到着。53.71km地点。1266m。私たちランナーは走っているので寒さは感じないが、きっとコース上の警備やマーシャル、係員の方々は寒いと思う。本当に頭が下がる。
大岳山を過ぎて少し行ったところに山から流れる清水、そしてその少し先の地点で流れ落ちている滝の水をペットボトルに入れて補給する。水は余っているのだが、これから先、まだ20km弱あるので念には念を入れることで安心を手に入れようと考えての行動だ。
大岳山からはほぼゴールまで下り基調だ。58km地点の標高929mの御岳山、御岳神社を過ぎ、60km地点の日の出山から遠くに見える東京のビル群や五日市町の上にかかる雲海を見つつ、やっとゴールに近づきつつあることを実感する。
日の出山からゴールまでは約10km。金比羅尾根を最後の力を振り絞りとことこと歩くくらいのスピードで駆け下りていく。ここでは多くのランナーに抜かれた。だが私の今回の目的は「完走(完歩)」だ。怪我をしないでゴールしなければならない。
街が見えてきた。日の出山で夜明けを向かえ、もうすっかり朝の気配だ。多くの人たちが、「おかえり」「お疲れさん」ということばをかけてくれる。
エイドでもらう食べ物や飲み物はこの大会ではないが、応援してくれる人たちの声がけには勇気と元気をもらった。

















































大会の今年のテーマは「アキラメナイ、チカラ」。
今はつらいけれど、我慢すれば必ず乗り越えられる。
走ることで、震災で被災した方々に応援のメッセージを届けたいという主催者の言葉が身に沁みる。
「ハセツネに勝者と敗者があるとすれば、あきらめずに走りぬいた人が勝者だと思う。」
ここには書けないが、様々な問題、トラブルを抱え、私は今を生きている。
走るのも決して速くない。でも前へ進めば必ずゴールに辿り着ける、そう思って生きてきたし、これからもそうありたい。
「前へ」私は進んでいきます。

















リザルト
第1関門:5:25:34 1377位
第2関門:11:01:51 1240位
第3関門:16:04:03 1101位
ゴール: 18:35:56  991位

完走率:男子1532/1920
女子192/237
    全体1724/2157
完走率:79.9%
装備:ライト(モンベルオリジナルヘッドライト90ルーメン、ジェントス閃150ルーメン)⇒高輝度LEDは地面から立ち上がる蒸気や雨粒に反射・拡散して地面がよく見えないので注意が必要。今回ヘッドライトを登りは頭に付け、くだりは手に持って走った。
ザック:グレゴリーリアクター15L。この大きさは妥当。ウェストベルトの網の中に食べ物、カメラなどを入れられるので重宝する。
カメラ:おなじみオリンパスμ760。タフ機能はないが、全天候型の生活防水で機動が速く、撮りたい時にすぐ撮れるのがいい。昔のカメラも捨てたもんじゃない。
シューズ:スポルティ―バのワイルドキャット。長い距離のトレールに良いということで2009年に購入したもの。少し横幅が広いため足の納まりがいまいちだが、路面をとらえショックを吸収して安心して走ることが出来る。

ウェア:アシックスのランニングキャップ
グローブ:東急ハンズで購入した園芸用のゴム引き手袋。これは頑丈でよかった。
アシックスのトレラン用ジップアップロングシャツ
ファイントラックアンダーTシャツ⇒これは汗を吸わず外に出す最高のウェアではないだろうか?
ファイントラックブリーフ
ワコールCW-Xスタビライクスロングタイツ⇒足もとは安心するが、縫いしろの部分でお尻の穴の部分や股間部が擦れていつも痛くなるのでどうしたものか考えている。
5本指コクーンソックス⇒絹で出来ているので少々耐久性に難があるが、水はけは最高。いつも足はすっきりした状態で走行できる。

飲食物
水2L⇒ハイドロに入れて飲む。
ポカリスェット900mlのペットボトル2本⇒ハイドロの水がなくなったときのリザーブ用。結局1本まるまる残った。
魚肉ソーセージ5本
アミノバイタルやエネルギーバーといったもの⇒8つほど持って行った。私はこういったどろどろした食べ物がどうも苦手。エネルギーチャージには最適ということだが、これからいろいろと試して行きたい。

その他
タオル1枚、ファーストエイドキット、テーピング用テープ、エマージェンシーホイッスル、ボールペン、ゴミ袋、携帯電話

今後検討するもの
ストック、高輝度ヘッドライト(LEDではないもの)

以上。